analogue

旧M邸

Date
2024
Location
岐阜県
Type
住居
Floor area
125m2
Contractor
堀田建設
Curtain
so/meto
Text
建築家が90年代頭に建てた自邸を、新たに取得した施主夫妻のために改修を行った。しっかりしたコンクリートブロック造の矩形の箱に、矩勾配の軽快な折板屋根がのった住宅だ。解体や設計を進めるなかで、次のように解釈されていった。11階では南北方向に開き、2階ではその東西方向に開いている。2階からは周辺の屋根並みと周囲の山が見える。1階において、中央の3本の丸柱は北(くだり)側と南(のぼり)側を分けている。異なる性質で一室空間内を分けつつも、それらを重層させている。温熱環境や地下の湿気に対処しつつ、この特徴を損なわないように、床の見切りや、新たな建具、ルーバーを加えていった。
 新たに設計した部分は、なるべく覆い隠すことをせずどのように手を加えたか分かるような方法をとっている。ただしそれらが既存の建築から浮かないように、コンクリートブロックの寸法や、RCの寸法、屋根形状等を参照しながら形や寸法を決めていった。この建築が次に手を加えられるときに、どのような部材がどう組み合わさってできているか分かるようにすることは施主が望んだことでもあり、この住宅が生き延びるためにも重要であった。

さらに装飾をひもとく

Location
日本橋高島屋
Type
展示会場構成
Floor area
53.18㎡
Supervision
五十嵐太郎
協力:菅野裕子
Illustration
宮沢洋
Curator
海老名熱実(高島屋史料館TOKYO)
Contractor
展示什器 ファインクラフト / 佐藤昌典
スタンプ台 早川真介 / 早川記録, 玉木陽祐 / たまき木工所
Photo
早川真介
Text
日本橋高島屋史料館TOKYOにおける展示「さらに装飾をひもとく」の会場構成を担当した。展示は2024年9月から6ヶ月間に渡って開催された。展示内容は近代〜現代に至る各時代の建築が多く残り、かつ展示会場が位置する街でもある日本橋の建築を紹介するものであった。53もの建築をつぶさに観察し、それぞれの解説がパネル形式で展示される。配布物として展示された建築を見るためのマップが渡され、鑑賞者は展示を見終わったあとに日本橋の街を歩き、実物の建築を見に行くことができる。
展示レイアウトは鑑賞者が街に出るための前段階として、街を自由に歩き回るような体験を目指した。床には展示される建築がプロットされた日本橋の地図を貼り、その街区に沿うように什器を配置することで、角度をつけた配置となり、立体的な展示空間になった。天井からは首都高を模した什器を吊った。紹介される建築は6つのカテゴリに分かれており、パネルを展示する什器を6台計画した。什器はそれぞれ展示される建築を参照し、各カテゴリの特徴をもつ什器が生まれた。濃密な展示内容によって、小さな部屋に楽しげな多くの要素が集まり、上を見たり下を見たりしながら、凝視したり流したり、うろうろしては立ち止まり、そんな鑑賞体験になったのではないかと思う。
また、展示に合わせて会場である日本橋高島屋(設計 高橋貞太郎1933年竣工、増築 村野藤吾1952-73年)の館内の装飾を観察するスタンプラリーが開催され、館内各箇所に11台設置されるスタンプ台を設計した。高島屋のもつ質をまとい、展示内容とも合って、かつ現代的な軽さをもったデザインとして、無垢の木の柱頭・柱脚に、ポリカ波板の波を柱のフルーティング(溝彫)に見立てた什器を設計した。

タカネコヤ

Date
2024
Location
愛知県名古屋市西区那古野2-8-8
Type
うどん屋
Floor area
72m2
Contractor
家具 studio Patch
設備 COOLAB
電気 フクモト
厨房 厨房プラン
植栽 GREEN DESIGN EN'S
照明 STUDIO PREPA
Photo
安井源
Text
 「豊前裏打会」のうどんを提供する飲食店。店主は北九州のうどん屋で修行した後に、円頓寺商店街の路面テナントでお店を開くことにした。この場所ではお店が入れ替わるごとに内装を変更するため仕上げを重ねていたようで、床の塩ビタイルや壁のシートを剥がしながら過去の内装の履歴を発掘していった。
 工事中に昔からこのテナントを知っていた街の人から聞くと、当初はマリンバ教室を開く喫茶店だったとのこと。仕上を剥がしていくとガラスのテラゾー、鏡面の天井材、カラーガラスの壁面など当時の内装を想像させる特徴的な仕上が出てきた。それらを丁寧にクリーニングしながら、うどん屋として必要なカウンターなどの造作と合わせて検討する。直前のお店である食堂で使われていた家具は張り地や天板を変更してお店に置いた。円頓寺商店街の舗装やアーケードの支柱の色を参照し仕上色を決定していく。過去の内装の履歴を辿りながら、新旧の仕上や素材を同じレイヤーで操作するように設計を進め、商店街というデザインコードの中で調整した。
 またペンダントライトはSTUDIO PREPAに特注で製作を依頼した。

MATO OBJECTS STORE

Date
2024
Location
名古屋市中区松1-9-13 フラワーセンター東棟No.12
Type
物販店・カフェ
Floor area
55m2
Contractor
家具 studio Patch
空調 COOLAB
電気 フクモト
給排水衛生 浅芳設備
Text
 花卉卸売市場が集まる街、松原フラワーセンターの一角にある2階建てのテナントの改修。現代の作家による作品と古物、アジアからヨーロッパやアメリカなど国内外のプロダクトが並ぶセレクトショップ。接道とフラワーセンターの中庭のに挟まれるように建っている。透過性の高い木製引戸を両側に設け、カウンターや展示什器を壁際に計画することで、接道から中庭まで視線が通り抜けるよう計画した。
 1階と2階はほぼ同じ面積と天井高である。2階はフロストガラスの腰窓がありアイランド型の什器を置いている。開口の大きさやガラスの材質、什器のレイアウトにより空間の性格に違いが出る。例えば内部の塗装色は少し緑みのあるホワイトであるが、光量が多く直接光となる1階と拡散光となる2階では色の見え方が変わる。
 フラワーセンターの景観に調和するよう、照明計画や仕上色など周囲の卸売市場を参照しつつ、物販店としての個性が出るように設計した。

kan

Date
2025
Location
名古屋市中区栄5-14-5
Type
アパレルショップ
Floor area
19m2
Contractor
co-n
Client
kan
Text
 kanは2020年にアパレルブランドをスタートさせ、オンラインショップやPOP UP STOREなどのイベント出店、セレクトショップの卸売をメインに活動してきた。そして4年間の活動を経て名古屋に拠点となる実店舗をオープンすることになった。
 元々ワンルームの住居だったビルの一室を店舗に改修する計画である。施主からは都度ハンガーバーや棚の高さを変更できること、限られた面積を窮屈に感じさせないことが要望として挙げられた。北側に接道開いた掃き出し窓がある。現地調査をした時、夏場のこもった暑い空気と暗い室内でも窓から外を見ている間は気が晴れ、この空間で重要な役割がある開口だと実感した。
 アパレルショップでは服を陳列するためのハンガーバー、棚、在庫収納が必要となる。これらを部屋の壁天井床と切り離して独立したものとし設計して配置しようとすると、狭い室内に必要なものたちが押し込められたような窮屈さをどうしても感じた。そこで店に必要な機能を包括し、室の外形を変えていくような、什器と空間を一体とした造作を検討した。
 kanではこれまでの4年間に制作したコレクションを普遍的な装いとして制作年に関わらず店頭に並べる。面積19m2の中で多くのコレクションを効率よく陳列するために、両側の壁沿いに商品を並べる計画とした。ハンガーバーや棚を支持するために30×60mm角の木材が2本組で束ねられ、開口部に向かって連立し、天井よりも上に伸びて上端が見えない。壁際の木材が袖壁のように軽く空間を分節しながら反復し、19m2の室内に奥行が生まれると考えた。

O nagoya

Date
2024
Location
名古屋市中区栄1丁目
Type
アパレルショップ
Floor area
117m2
Contractor
大創
Client
O
Text
 代官山を拠点とするセレクトショップOの名古屋店。名古屋市科学館近くの伏見通りを一本入った路地に店舗があり、水平に長い窓越しに店内の様子が見える。街路の植栽の緑が室奥の大きな鏡面に反射し、風景が反復する。フィッティングとバックヤードを区画する間仕切り壁としてのカーテンは、2枚の素材を重ね合わせて製作。ここでは鏡面、塗料、アルポリック、UVシートなど複数の反射性能のある素材を組み合わせることで、空間の形を不明瞭にする方法を検討した。

BLANKMAG

Location
anywhere
Type
可動展示
Contractor
studio patch
Photo
村越怜
Client
BLANKMAG
Text
 アートブックとアパレルを展示するために設計した、工具を使わずに組み立てることができる可動什器。屏風のように自立する構造のため、折り方を変えて展示場所に合わせて配置することができる。開口部の枠の見付を大きくすることで、木枠にダボを仕込んでおり、ハンガーバーや棚板などの位置が変更可能。渋谷PARCOでの展示で使用した様子。

HOME ECONOMICS EXPERIMENT

Location
anywhere
Type
可動展示
Contractor
studio patch
Photo
村越怜
Text
 椅子やランプ、花瓶や灰皿など大きさの異なる作品をレイアウトするための可動展示として設計した。両面にパンチングパネルを貼った側板を支えに自立し、パネルの穴にビスを通して棚板を固定している。棚板の形を変更することで円形など形を変えて展示空間を作ることもできる。下北沢のMUSTERD HOTELでの展示で使用した様子。

HOME ECONOMICS EXPERIMENT×BLANKMAG STUDY1.4

Location
anywhere
Type
可動展示
Contractor
studio patch
Photo
早川記録
Client
BLANKMAG
Text
 サスティナブルな視点で実験的な製作を行うユニット(HOME ECONOMICS EXPERIMENT)と、独自な視点で蒐集されたアートコレクションを軸に活動するカルチャーレーベル(BLANKMAG)のために設計した可動展示ブース。全国のギャラリーを巡回するために搬入・組立・分解の効率性を検討し設計した。分解された部材はハイエース1台で持ち運びが可能。巡回展示が終了した後の解体部材の転用方法を視野に入れ、部材モジュールを決定している。豊橋、名古屋、京都、東京と各地で展示を行い、名古屋会場は上記の金城市場であった。

BY

Date
2023
Location
愛知県名古屋市千種区今池5丁目12−5
3F (BY}
Type
文化センター
Floor area
42m2
Contractor
CRUSOE
Client
LIVERARY
Client
BY
Text
 東海地方のカルチャーを紹介・提案するWEBマガジン「LIVERARY」の拠点。シェアオフィスとして機能しつつ、展示やトークショー、ライブなど様々なカルチャーを発信している。居酒屋「円満」の店内を抜けて階段を上った3階にある。かつて飲食店の個室として和室の設えであった場所の改修。壁際から800mm程の床を残して、空間の中心部の床と壁を解体する。丸鋸で大引・根太・胴縁を丁寧に分断した後、釘抜きなどの下処理をして再利用できる部材にする。それらを壁際に積み上げることで展示什器を作る計画。解体せず残した壁際の床に解体した大引を重ねることで、ベンチ程度の高さの細長い床ができる。改修以前は床や壁の中に隠れていた部材の断面や小口が現れて、展示作品と同じレイヤーに配置され壁面を構築する。この場所で拠点を作る意味をLIVERARYの武部氏と考え、そこにある材料を仕上としてどのように見せるかを検討した。
 中心部は人の溜まり場として高耐久樹脂を流している。限られた開口の光を床が反射し部屋奥まで光る。

金城市場

Location
名古屋市北区清水5丁目32−22
Type
複合施設
Floor area
373m2
Client
LOOK BOOK
Text
 戦後間も無く建てられた昭和30年創業の木造平家建ての市場を複合施設として改修する計画 。2連の切妻屋根や方杖の取り付く列柱など、この木造建築が持つ力強い骨格が空間を形づくるように解体・構造補強・造作を行なった。

伏見ミリオン座

Location
名古屋市中区錦2丁目15-5
Type
什器
Contractor
studio Patch
Text
 名古屋市の映画館のために複数の什器を設計した。それぞれターンテーブル、スナック、物販パンフレットが収納される。赤色系統の脚は周辺のインターロッキング舗装や建物のレンガ外壁を参照しながら色を決定し、反射性の高いセピア色のアクリルには、前面道路の街路樹など街の風景が映り込む。
 街路側から見るとこれらの什器がレイヤーのように遠近感を持ち重なって見える。点在する什器たちがまとまってひとつの空間を作りつつ、それぞれ什器ごとにの場所性が表れるように提案した。

等持院の住宅

Location
京都府京都市
Type
住居
Floor area
67.44㎡
Contractor
ジオテック建設
Co-architect
家入杏
Curtain
so/meto
Photo
早川真介
Text
京都市の中心地から少し離れた場所に建つ住宅。建主である作家夫婦には住宅とは別に制作の場があるため、この住宅では生活をコンパクトにまとめることが目指された。基本的な生活は1階で完結するようになっており、建主が以前から使っていた家具を持ち込み、それに合わせて新しい家具や間仕切り壁を作ることで、古さを引き継ぎながらも新しい空間に馴染むようにした。
2面が道路に接する敷地であることから、裏表がないような建ち方とし、隣地建物との配置関係を工夫することで東西南北の4面に開口が設けられるようにした。建物の中央には道路と平行になるように2階部分を設けることで、空間をレイヤー状に分節している。また、2つの道路をつなぐように敷地内に小道を設けた。この小道は将来敷地内の段差を解消するバリアフリー動線としても計画されている。
浴室には大きな引違い窓を設置し、テラスと一体的になる水場として計画した。壁よりも窓の面積が大きく、この家で最も明るい場所となった。
小さい住宅ながら町を身近に感じ、散歩をしているときのような感覚を、途切れずに家の中まで持続させる住体験となっている。

八幡山の住宅

Location
愛知県名古屋市
Type
住居
Floor area
109㎡
Contractor
誠和建設
Photo
セミフォトグラフ
Text
雑木林の縁に建つ3階建ての住宅である。
敷地はクヌギやカシ、アベマキなどの雑木に周辺を囲まれており、また敷地内には3m近くの高低差があった。高低差がある敷地に建物を建てる場合、接道と敷地の間に土留擁壁を建設し、敷地を高く造成することが一般的である。そのような造成が繰り返され、周辺は建物が建つごとに道に対して擁壁面が立ち並ぶ様相となっていた。
この住宅は、傾斜部に敷地の土を留めるように、高さの異なる建築の基礎を打設している。接道には山が続いていくような様相を作りつつ、建設コストを下げる建て方を目指した。構造材となる基礎コンクリート、梁や柱の形が室内に現れている。梁にモビールを吊るしたり、基礎の段差にリモコンを置いたり、構造が日常の生活にも参加する風景を提案した。

またこの敷地では方角により様々な風景を見ることができた。周辺の雑木林をはじめ、地面に近い箇所では山の地肌、街路樹や隣地の庭の桜の木、1キロ先の山などである。
更地の状態で体感した様々な風景を建築の内部に取り込むことを意識し、窓の高さや大きさ、床の高さや位置を検討した。周辺の緑や空を複数の視点場から眺めることができる住宅となっている。

HYCA

Location
愛知県名古屋市中区栄2-1-21サンシャイン伏見2A
Type
美容室
Floor area
63.9㎡
Contractor
内装:H2 / 平川智一 平川博一
電気:名光電機 / 後藤豊光
空調:COOLAB / 出口知和
家具:studio Patch / 宮澤崇
   Asano Works / 浅野智彦
Photo
ToLoLo studio
Text
名古屋市中区伏見の鉄骨造テナントビル2階にある、前面道路に面したガラスファサードにより街に開かれた一室を改修したプロジェクトです。
63.9㎡の中で要求される機能と席数を確保しつつ、大きな窓面を活かした開放的な空間とする為にバックヤード以外はワンルームとして、空間にリズムを与える細分化した家具で仕切っています。
店内はグレーのグラデーションで構成し、周辺の街並みのカラーチャートを参照して、各部の色味を調整しています。
また、都市空間に呼応するスケールのアクリル照明が天井に浮かび、室内だけでなく街路を柔らかく照らします。

UNEVEN HUB STORE

Location
愛知県名古屋市西区天塚町1丁目108-1
Type
商業施設
Floor area
760㎡
Client
UNEVEN,Dhal,awai
Director
UNEVEN / 安井源
Contractor
内装 ASANO WORKS / 浅野智彦
設備 COOLAB / 出口知和
電気 LIFE AGENT JAPAN / 五十川京治
家具 studio Patch / 宮澤崇
植栽 UI PRODUCT / 石田有佑
外構 COOLAB / 出口知和
Photo
VA INC / 岡村靖子
Text
「UNEVEN HUB STORE」は、愛知県名古屋市西区天塚町という穏やかなロケーションにて、ファッションのセレクトショップ「UNEVEN HUB STORE」を起点とし、デザインと生活雑貨を取り扱う「Dhal Homes」、スペシャリティーコーヒーと焼き菓子を提供する「awai」、Swimsuit Departmentが展開するアンティークオブジェクトショップ「BATHHOUSE nagoya」、大小二つのイベントスペースとレンタルキッチンを集約した小規模ショッピングモールのような発信拠点。
元々スーパーマーケットであった既存図面を参考に、ぐるりと周回可能な通路をレイアウトし、通路上部には、各種配管を隠しつつ空調設備、照明設備を内包したボーダーを設置。UNEVEN HUB STORE中央のサークルカウンターを中心に、各店舗とイベントスペースを放射状に配置し、人々が集う場所になるよう植栽やベンチも効果的に取り入れ、街(商店街)を歩くようにショッピングが楽しめる空間を創出しています。

CONNECT STORE

Location
愛知県名古屋市天白区植田3-1306 ロイヤル磯谷102
Type
物販店
Floor area
71.6㎡
Director
UNEVEN / 安井源
Contractor
内装 ASANO WORKS / 浅野智彦
電気 LIFE AGENT JAPAN / 五十川京治
家具 studio Patch / 宮澤崇
什器選定 NO AGE
Photo
川端一義

京都リトグラフ工房

Location
京都府
Type
版画工房
Floor area
109.77㎡
Contractor
ジオテック建設
Co-architect
家入 杏
Text
リトグラフ作家である施主が倉庫兼工房として使用していた建物を、リトグラフ教室や講座が開けるようにすることを目的として改修を行った。リトグラフは専門的な機械を必要とする技法であり、制作を体験したい人や自分の作業場を持たない作家など、多数の人が利用できるような開かれた場が必要であった。敷地は嵐電の線路に面しており、既存建物は周辺住宅よりも粒が大きい平屋で、リップ溝形鋼の骨組みに波板鋼板の外皮が張られた軽快な建物であった。当初はペンキ屋の事務所として建てられ、個人の工房として一度目の改修を経ており、今回は二度目の改修となる。
既存建物は間仕切り壁によって分割されていたが、既存の間仕切り壁を下から2mカットし、ひと繋がりの空間とした。そこに制作に必要なプレス機などの大きな機械や、下絵を描いたりインクを練る作業台をリトグラフの工程順に、外部にある振動槽まで一直線に並べた。また、線路や前庭、隣接する空き地に向けて開口を大きくとったり、棚の設置や外構の整理、空調換気の整備など、解体・変更・造作の細かな取捨選択によって、この敷地の環境を、建物という媒体を介することでより鮮明に体験できるようになった。その結果、利用者には庭で集まっているようなオープンな環境となり、近隣住民や通りすがりの人には視線の抜けや作業風景を提供している。

金城市場

Location
愛知県名古屋市北区
Type
解体後
Client
LOOK BOOK
Photo
大熊敏佳

LILLT

Location
愛知県名古屋市中区
Type
ジュエリー用什器
Contractor
studio Patch / 宮澤崇
Photo
大熊敏佳
Text
アクセサリーのための什器の提案。

no name

Location
愛知県
Type
骨董品店
Contractor
studio Patch / 宮澤崇

Room A

Location
愛知県名古屋市
Type
住居
Floor area
80㎡
Contractor
マニカホーム
Photo
大熊敏佳
Text
名古屋市内にある築40年のマンションの一住戸を、夫婦2人と子供1人が暮らす住宅兼オフィスに改変する計画である。
1980年代初期に建てられたこのマンションは、採光条件の良い開口沿いに個室、中央にリビングキッチンを配置した「センターリビング」型のプランであった。南北に細長い専有空間を、細かく間仕切り壁で囲うことで個室が作られており、竣工当初から変わらないプランニングで住まわれてきた住戸である。その住戸を訪れ各個室の建具を開放したとき、南北に心地よい風が抜け、それぞれの個室の中で溜まっていた空気が流れ外部に接続したように感じた。南北に長い空間の隅々まで外気や採光が届くプランニングを意識するきっかけとなった。
スケルトンにした住戸に、新たに南北方向に伸びる7枚の合板壁を設えた。通風を遮らずに場所を仕切る壁である。それらの壁に洗面台やキッチンなどが付随しており、行為の基点となるよう考えた。この合板壁は通常の間仕切り壁と比較すると少し薄い。壁の表と裏でのそれぞれの行為が、壁の小口を境界にクロスカッティングされた映像のように見え、動きのある空間となることを意識した。
またキッチンなど水廻りが住戸の中央にあるプランは変えず、キッチンの南北をそれぞれプライベート(南)とパブリック(北)な場所とした。合板壁は南に向かうにつれ、白色が薄くなり素地に近くなる。住戸の南北を行き来し生活する中で、場所性がグラデーショナルに変化することを仕上げに反映させた。